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父と娘の最後の思い出・・・『パパ、今まで育ててくれてありがとう』

父と娘の最後の思い出・・・『パパ、今まで育ててくれてありがとう』

『看護師と患者と涙』65話。呼吸器内科に勤めていた時のお話です。肺癌の父のためにどうしてもウエディングドレス姿を見せたいという娘さん。上司の許可もおり、待ちに待った当日・・・

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看護師と患者と涙
私が呼吸器内科で働いていた時のことです。高島さんという50代の肺癌の男性がいました。「こんなこともわからんのか!」高島さんは仕事をバリバリしてこられた方で、私たち新人ナースにもとても厳しい方でした。不器用な私はいつも怒られてばかり・・・
「大変申し訳ございません。これからはきちんと知識を付けていきます」「うんしっかりしてくれ患者の命がかかってるんや」「すみません・・・」このような会話が続いていた高島さんですが、癌が進行していき体中に痛みが出るようになりました。
その痛みを抑えるための医療用麻薬が開始となり、日に日に薬の使用量が増えていきました。医療用麻薬は痛みを緩和させると共に、その使用量が増えると量に伴って意識も朦朧としていきます。怒ってばかりだった高島さんの表情も、フワフワと少し笑みを浮かべたような表情になっていきました。
ある日、ご家族の娘さんから「お願いがあるのですが、聞いてもらえますか?」「どうされましたか?」「父にウエディングドレス姿を見せてあげたいのです 元気になって退院できる日を待っていたのですが、この状態だと、退院は難しそうで・・・」
「まだ意識があるうちに、私のウエディングドレス姿をみてもらいたい・・・難しいお願いなのはわかっているのですが、叶えていただけるのなら・・・」「素敵ですね!きっと高島さんも喜ばれると思います!上司と医師に相談してみますね」娘さんの思いを叶えたいと思い上司に相談し、許可が出ました。
そして当日。いつものように面会に来て、個別部屋のバスルームで着替え、突然出てくるという設定です。「パパちょっといってくるね」「うん」しばらく私たちとの会話が続き、すると、突然バスルームからウエディングドレスに着替えた娘さんが出てきました。
「わー!綺麗!」「パパどうかな?」「う、うん綺麗だな〜」と、ベッドに横たわったわままの高島さんは目に涙を浮かべながら頷いていました。
「パパにどうしてもみてもらいたくて看護師さんにお願いしたの パパ今まで育ててくれてありがとう」娘さんの言葉に、高島さんは涙を浮かべ、笑顔で頷くばかりでした。そのご家族の温かく愛情溢れるすがたに、周りにいる私たちも涙が溢れてしまいました。
そして数ヶ月後、高島さんは家族に見守られながら安らかに息を引き取りました。その表情は微笑んで見えました。高島さんは私にとって厳しく育てて下さった人物であり、高島さん・ご家族から病を通しての家族の絆や愛情も教えてもらいました。今でも忘れられない心に残る患者さんです。

【看護師の実話】看護師の忘れられない心に残る言葉「あんたに出会えたのは最高の出来事だった」

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