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最後の食事『移植が成功し、免疫も安定したら思う存分食べましょうと約束していたけれど』

最後の食事『移植が成功し、免疫も安定したら思う存分食べましょうと約束していたけれど』

「ありがとう。看護師と患者の物語」12話。白血病で骨髄移植をしましたが、1年後再発し、余命数日の20代の患者さんを受け持った時のお話。この患者さんはお寿司が大好きで、元気になったらお寿司を思う存分食べましょうと約束をしていました。

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白血病で骨髄移植をしましたが、1年後再発し、余命数日の20代の患者さんを受け持った時のお話です。

この患者さんは、骨髄移植の時から受け持ちをしていて、お互いに信頼関係ができていたと思います。

血液検査の数値も日に日に悪くなり、全身の痛みで動けなくなっていった患者さん。
おそらく自分の死期を悟っていたと思います。
その時、母親には主治医から、病状と余命についての説明がされていました。

自力で起き上がることも、自分で水を飲むこともできず、食事も全くとれなくなり、点滴からの栄養で過ごしていたある日のことでした。


患者さん

「寿司が食べたい、寿司が食べれたら悔いはないです」と呟きました。

白血病患者は骨髄移植後、免疫力が極端に低いため、生ものは食べてはいけません。
今まで1年以上、生ものを我慢していた患者さん。

お寿司が大好きだということは、わたしも知っていました。
移植が成功して、免疫も安定したら、思う存分食べましょうねと、約束していました。

それだけに、病状が悪く食事を取れない状態なのに、寿司が食べたいと言った患者さんの言葉は、とても重くわたしの心に響き、わたしは患者さんの思いを、主治医に伝えました。



「患者さんが、お寿司を食べたいといっています。最期に、大好きなお寿司を食べさせてあげたいです。先生、許可をお願いします。」

主治医

「そうだね。それが彼の望むことなら、食べさせてあげよう。誤嚥すると肺炎になりかねないから、ちゃんと付き添っていてあげて。」

私は、患者さんの母親に電話し、患者さんが好きな寿司ネタを買ってきてあげてくださいと伝えました。

次の日、母親がマグロとえんがわ、イカなど、患者さんの大好きな寿司を持ってきてくれました。

患者さんを起こしてテーブルにお寿司を広げ、自力では食べられないので、母親が口まで運んであげていました。

私はそばで見守っていました。

頑張って少しだけ口を開け、大好きなマグロを口に入れましたが、何口か噛んで、すぐ吐いてしまいました。

それでも、「おいしい」と微笑んで、とても喜んでくれました。

それから数日後、患者さんの全身の痛みが悪化、鎮痛剤と鎮静剤の持続投与が始まり、眠るように患者さんは亡くなりました。

患者さんの母親は、

「最後にお寿司を食べさせてあげられて本当によかった。あの子も悔いなく旅立てたと思う。看護師さん、ありがとう。」と、私に言ってくれました。

私は、終末期患者のQOLの大切さを、この患者さんを通して学びました。
最後まで患者さんのために、寄り添って仕事をすることを誓ったお話です。

イラストライター紹介

イラストレーターのオカ サヤカと申します。
温かいイラストで、皆さまの素敵なエピソードを彩ることができていたら幸いです。
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