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最後の望みの治療『看護師はどんなに忙しくても、患者さんの命の重みを理解しなくてはいけない』

最後の望みの治療『看護師はどんなに忙しくても、患者さんの命の重みを理解しなくてはいけない』

「ありがとう。看護師と患者の物語」11話。胃癌が既に進行し、ステージ4と診断された患者さんと看護師のお話。患者さんにとって、手術や抗がん剤は最後の望み。そのことを深く理解できていなかったために、生んだ患者さんとの溝。私にとっては今でも忘れてはいけない重要な患者さんです。

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私が看護師12年目の話です。
外科に配属になっていた私は、一人の患者さんの忘れられないエピソードです。

その患者さんは胃癌でした。
仕事が忙しく、海外出張も多かったため、異変は感じていたのですが、放置されていました。

定年退職となったため、検査を受けますが。症状が現れてから2年経過していたようです。
診断は・・・胃癌ステージ4。末期の状態でした。

やっと夫婦でゆっくりこれからを楽しむことができると喜んでいたのに。
とかなり家族はかなり落胆していました

患者さんは望みをかけて胃の全摘手術を決断します。
しかし、結果は転移が酷くインオペ(開けて閉じるだけ)となりました。

残された治療は抗がん剤でした。
その抗がん剤は錠剤で、食後30分以内に服用となっていました。

患者さんは食事が終わったため、ナースコールしてきましたが、私は重症患者さんのシリンジポンプの更新などに追われており、30分以内に行けませんでた。

再び患者さんからコールがあり。急いで薬を持って行きました。

患者
「この薬は食後30分以内に飲まなあかんのやろ?なんでもってこなかったんや!あんたらはわしの気持ちなんかわからへんのや!あんたらにはなんちゃない薬やけど。わしにとったら最後の望みなんや!」
とお叱りをうけました。

飲み忘れ防止のために30分以内に設定されているだけで、30分過ぎても効果は変わりないことを説明しますが、患者さんは納得しませんでした。

その事があってから、私はその患者さんの担当から外してもらいました。

そのエピソードから2週間後くらいの事です。

循環器の主任が突然退職し、管理職が師長しかおらず、経験年数とその病院に長く勤めていたため、即戦力が必要との事で、循環器に異動となりました。

私の異動後もその患者さんは、抗がん剤治療されていました。
そして、もう一度オペに踏み切きりましたが、結果はインオペとなったと前の同僚から聞きました。

その数日後。夜勤で勤務していた私に、その患者さんが訪ねてきました。
どうしたのかと尋ねると

「前。わしがあんたを怒ってな。ずっと胸がつっかえてて。自分勝手やっあなぁと。気がついたらあんたはいなくなってるし。わしのせいで辞めたんじゃないかと心配してて。

今日勇気を振り絞って聞いたら。異動になったって聞いて会いにきたんや。この前はすまんかったな。ほんまにすまんかった。走り回りながら仕事してるあんたをずっと見てたのに。いつも話聞いてもらってたのに。

しょうもない事で傷つけてしまった。このままやったら死ねないなって思って。謝りに来た。」

との事でした。私は自分が悪かったことを再度謝罪し、2人とも泣きながら握手しました。

その2日後。その患者さんは急変し、亡くなりました。
違う病棟に勤務していましたが、師長にお願いして、死後の処置をさせてもらいました。
初めて泣きながら処置しました。

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