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新連載『泣かないで、お別れまでは笑顔で』

新連載『泣かないで、お別れまでは笑顔で』

新連載『泣かないで、お別れまでは笑顔で』。嬉しいこともあれば辛いこともたくさん経験する看護師の仕事。今回はそんな仕事を通じて、忘れられない患者さんとの感動エピソードをご紹介していきます。

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泣かないで、お別れまでは笑顔で
末期がんによる全身転移の50代の松沢さんと80代のお母さまとのお話です。お父様を早くに亡くされ、母一人子一人で長く生活されていたそうです。
ある日、松沢さんが体調の変化に気付き、病院で検査を受けたところ余命1か月を宣告されてしまいました。
それから入院し1週間過ぎた頃、全身の耐え難い痛みに襲われた松沢さんは「先生・・・」「痛みを取って下さい・・・」「先生・・・」只々「痛みをとって欲しい・・・」と口癖のようにおっしゃっていました。
尋常ではない痛みを取る為には強い鎮痛剤が必要となり、それを使う事による意識混濁によって松沢さんは・・・ーもう食事もほとんど取れませんでした。
お母様は点滴ではなく、口から栄養を取る事が命を保つ事と信じていましたので松沢さんの好きな料理を、病院の小さな調理室で一生懸命作られていた姿が忘れられません。
松沢さんも頑張って一口二口と食べていたのですが、それも長く続きませんでした。しかし、お母様は一生懸命食べたいものを聞いていました。「何食べたい?」「なぁ・・・お母さん何でも作ったるからね」
もう答える力もなくなっていた頃、松沢さんが「アスパラガスみたいな形の・・・昔食べたビスケットが食べたいな」とおっしゃったのです。それはお母様も松沢さんも大好きで昔よく二人で食べたお菓子だったそうです。
お母様はすぐ病院の売店に走りましたがそれは売っておらず、代わりに私が買いに行きました。「外で買ってきます。」ずっと何も食べられなかった松沢さんが食べたいといったそれを、どうしても私たちは口にさせてあげたかったのです。
届けた時、また意識は遠のいている状態でしたが、お母様が一生懸命「あなたの大好きなお菓子よ。昔と変わらない袋よ。美味しそうよ。なつかしいわね。」と耳元で語りかけました。
すると目を開け一言、「食べたいわ」と。ぱちっ すぐに口に入れてあげましたが、もう噛む力はどこにもありませんでした。
それでも噛みしめるように「あー本当に美味しいわね。懐かしいわ、この味。」と。その時の嬉しそうに微笑んだお母様の顔が忘れられません。
結局、松沢さんが口にしたものはそれが最後でした。その2日後、お母様に見守られながら静かに亡くなられました。
今でも私はそのお菓子を目にする度に松沢さんとお母さんを思い出す。うるっ・・・「しょっぱいな・・・」

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